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今日はバレンタインデー、今年は澪を喜ばせようと奮発して新宿の伊勢丹に買い出しに行ってきた。 行ってきたんだが・・ 「チョコって、以外と高いんだよな・・」 正直私のこずかいで買えそうなチョコが見つからなかった。 澪の誕生日にお金を使ってから一ヶ月しか経ってないからな・。 でも折角だから一番おいしそうなチョコを一粒だけ吟味して買ってきたんだけど(それでも500円だぞ!)、一粒じゃプレゼントにならないし、、。澪の分は別に買おうと思ってたんだけど・・ 「なんで忘れてんだ!私!」 澪「いつも悪いな、食べるの手伝ってもらって」 律「いやいや、こんな誘いは毎年大歓迎だぜ!まあ澪にもらったチョコを真っ先に食べた後の腹持ちによるけどなー。あーうまかった!」 澪「ふふ、喜んでもらえてなによりだよ」 律「ところで澪、私からのチョコなんだけど・・」 澪「わかってるよ、どうせお金なくて買えなかったんだろ?ホワイトデーに倍にして返してもらうからな」 律「ごめんな・・。それにしても、今年は何個貰ったんだ?」 澪「んー20個くらいかな。律は?」 律「澪と一緒にクラスの子から貰ったやつだけだよ。これがアキヨので、これがいちごのだな。あとこれは・・・なんでもない」 澪「なに?なんで隠したの?」 律「いや、誰から貰ったのかわすれたっていうかーははははー」 澪「小さいけど、綺麗な包装だな・・」ヒョイ 律「こ、こら!それは!」 澪「・・本命・・」 律「違うって」 澪「ふーん・・・」 律「いや、違うよ?」 澪「朝、チョコくれた一年の子が、良かったらつきあって下さいって」 律「!で、なんて返事したんだよ!」 澪「べつに・・」 律「みおーー私のチョコはそんなんじゃないって・」 澪「つきあっちゃおうかな」 律「おま!冗談にもほどがあるぞ!」 澪「だって・・・」 律「ごめんって澪」ギュ 澪「やだ」ドン 律「な、なんだよ!謝ってるのに!」 澪「律のバカ・・」 律「あーーもう!」 澪「・・私のチョコを忘れた上、一粒しか買ってないチョコを独り占めして食べようとしてたって事?」 律「いや、ショボいから澪に渡すか悩んでたっていうか。 でもまあ、語弊はあるがその通りだ!」 澪「バカ律」 律「バカですよ!バカですとも!ところで告白の返事はどうなったんだよ!」 澪「バツとして律の大切なチョコを半分こにしてもらうからな」カプッ「ん」 律「半分こって//その食べ方でか//」 律「澪の味がした・・」 澪「バカ//」 律「ところで告白されてどうなったか聞いてないぞ!」 澪「ヒミツ」 律「くうーーー!」 澪「来年は律のチョコだけ貰う事にしようかな?」 律「//よし!来年は楽しみにしてろよ!」 おわり 澪「そういえば、律が買ってきたチョコ。ムギが持ってきてくれたチョコと同じだったな」 律「マジかよ!!!」 名前 コメント
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「田井中律ファンクラブ?」 それは律の写真がプリントされているカードだった。 田井中律、それは私の好きな人の名前だ。 小学生から一緒でいつのまにかアイツ無しの人生は考えられない位私にとって大切な人になっていた。 私の片思いだけど。 それにしても・・・ 「いつのまにアイツ、ファンクラブなんて出来たんだ?・・・気づかなかった。 律の事本気で好きになる子とかいたら嫌だな・・」 「澪!おはよ!」ダキッ 「キャ!り・・律!?やめ、ろ!」 ドカッ 「いてー!なーんだよかわいい声だしちゃってさ。でもたまには優しくしてくれたって・・」ブツブツ なんでこいつは何時も都合の悪い時に現れるんだ? 「さっきの、き、聞こえてないよな?」 「ん?何の事だ?それより今、なんか隠さなかったか?」 ヒョイ 「わ!こら!」 「田井中律ファンクラブ会員証、ナンバー568。A子。 ああー。」 「あーって、お前知ってたのか?っていうかナンバーが百桁あるんだけど・・そんなに会員いるの?」 「いや。そんなにないと思うよ。んで なんでこれ持ってるんだ?澪も入るのか?私のファンクラブ☆」 ゴツン 「いって~!!」 「冗談はそれくらいにしろ。じゃあこれは私からAさんに返しておくからな」 そう言いながら私は手を伸ばした。 「んー、いや私が渡しておくよ。丁度話したいことがあったしさ」 「・・・・・そ、そう。わかった・・」 そんな事が朝の登校中にあったわけだが、 昼休みにもまだAの所には行っていないみたいだった。 律のファンクラブか。そりゃあ律はカッコいいし包容力もリーダーシップもあるし、あの明るい性格だ。 人気がでないはずがないのは私が一番わかっている。 ほら今だってクラスの子と楽しそうにしゃべってる。 ん?今律がおっぱいさわってた?いや、まさかな。 律の事見すぎると嫉妬しちゃうからなるべく視線からはずしておかなきゃ。 放課後 「みんなー今日は先に部室言っててくれ。 後ですぐいくから」 「あ、ああ」 今から会員証を渡しにいくのかな?なんか話があるって言ってたけど・。 律の事がきになってそのことばかり考えていたら自然と足は音楽室ではなく律を追って歩いていた。 「なにやってるんだ、私・・・」 律とAさんは3組の教室から出てきて人気のない中庭に向かっていた。 「よし、ここなら誰もいないぞ。とりあえず先に 会員証返しておくな。っていうか、落とすなよ」 「ご、ごめんね。律が見つけてくれて良かった。 でも、2人で会う機会が出来て逆にちょっと 嬉しかったりして///」 「バ、バカ」 「それでな、返事なんだけど・・・えっと・・・」 「どうして黙ってるの?・・・・ やっぱり付き合うのは無理って事?」ウッ 校舎の陰に隠れて私は二人の会話を聞いていた。 (!!律、Aに告白されたんだ! Aとつきあったりなんかしないよな?・律・・・・) 「・・・私も悩んだんだ。 まあ正直、好意を持ってくれて嬉しかった。 ただ・・ 付き合うとなるとちょっとお互い知らない事が多すぎて、すぐにOKを出すには時間が足りないかなって。 だからまず友達から始めよう。うん。 それでゆっくりお互いの事を考えていこうようよ」 「・・うれしい・・ たとえその結果がどうであったとしても、 そこまで考えて貰えたことが嬉しい// やっぱり律は私が思っていた通りの優しい人だった///」 「へへ、よせやい」 最悪だ。律が告白を受け入れてしまった。 そこまで聞いていた事は覚えている。 だけどなんだか頭が真っ白になって 律が遠くに行ってしまったようで悲しくて、 まだ私の思いを伝えられていない事を今更のように後悔して・・涙が自然と溢れてきた。 そこでどれくらい一人でじっとしていたか覚えていない けれど、気がつくと鞄も持たずに自分の家に帰ってきていた 「律・・・・」 ピンポーン「ごめんくださーい」 「律?!」 律は私の鞄を抱えて扉の前に立っていた。 「よかったーやっぱり家にいた」 心底ほっとした表情を見て胸が痛んだ。 「ごめん・・。鞄ありがとう。」 部屋 「まったく澪、どうしたんだ?鞄も持たずに 部活にも行かないで帰ってるなんて。 みんな心配したんだぞ? 何かあったのかと思ってヒヤヒヤしたんだからな」 「ご・・ごめん・・」 「でどうしたんだ?そんな泣きはらした顔して。 相談ならのるぞ?」 「うん・ありがとう。私律に言いたい事があるんだ。」 (もう遅いかもしれないけど想いは伝えておこう・・・・でもその前に謝らなきゃ) 「あのな、私、中庭で律とAさんの会話、盗み聞きしちゃったんだ・・・」 「き、聞いてたのかよ・・・・。 まいったな・・・でも安心しろ。私の本命はいつだって澪なんだからな」 「え?」 「いやだから本命の彼女は澪だけだ」 「ど、どういうこと???」 「おい、もう7年も付き合ってるのになにいってるんだ」 「!!????」 今から律に想いを告白しようとしていたのに あっさりと告白レベルを飛び越えた事を言われて頭が混乱してきた。 「いやまって。いつから付き合っている事に?」 「私の中では小学校の頃からだ」 「・・・・」 よくよく聞いてみれば私が律のお嫁さんになると宣言したらしい。いや、覚えてないぞ。 片思いだと思ってたのにいつの間にか付き合ってたなんて。 唐突すぎて喜んでいいのか複雑な気分だ。 でもまてよ?そしたらあいつ・・ 「おい律!!」 「わ!何だよ、急に大きい声だして。」 「浮気、浮気なのかそうなんだな!?」バシッ! 「いって~!!!なにすんだ澪! 浮気って意味わかんないぞ!」 「わからないって?Aと付き合うんだろ! 私と付き合ってるならおかしいじゃないか!」グスッ 「え?お、おい、泣くなよ。Aとは、(まだ)友達だし! 澪・・泣くほど私の事・・好き//・・だったのか?」 「うん//・・・・好き・・・ヒック律が・・・大好き・・・ ねえ、どうして付き合ってるのに 私になにもしてこなかったの?」 「!!!!!な!///」 「・・・どうしてキスもしてくれなかったの? 付き合ってるなら早く気づきたかった・・」グスッ 「え、いや、えっとタイミングというあか、 あの//ちょとまッ」アタフタ 「律・・」 私はベットから立ち上がりドアの前で立ち尽くす律のそばへ歩いた。 私は勇気をふりしぼって律の顔を見つめる。 節目がちに照れた横顔が可愛くて愛おしかった。 「澪・・」 律が顔をあげた。 相変わらず真っ赤な顔だけど、すごく真剣でまっすぐな目を私に向けてくる。 律、そろそろ年貢の納め時だぞ。 私の心を読んだように律がちょっとはにかんで笑った。 視線が絡み合う。 そして自然にどちらからともなく唇を重ねた。 「はあ・・///澪、好きだ。」 律が私を抱きしめた。 痛いほどその気持ちが伝わってきた。 そしてまたお互いの顔を見つめる。 磁石でもあるのかと思うほどそうするだけで 自然と唇が重なった。 そして当然の事のようにベットに押し倒された。 今まで見たことがな律の顔がそこにあった。 私に欲情してる顔。 なんだよ。ちゃんと欲情するんじゃないか。 付き合って7年目?にして今が恋愛の沸点だと思うような熱い交わりだった。 初めてだったから夢中で自分の中を 律でいっぱいにしていった。 律がリードしてくれて、私の行為自体は稚拙だった。 けれど、 お互いの想いが最高に高ぶった瞬間だった。 律の腕枕に抱かれて私はもう一度聞いた。 「ねえ、あの3組のAさん?どうするつもり? 友達から始めようなんて調子いいこと言ってたけど・・・やっぱりどう考えてもあれ、浮気だぞ。」 「うん、まあ私は割と複数を愛せるタイプなんだ。 だからあの子とも友達からはじめようかなんて」 ガツン!! 「いってーーー!!冗談だって!!」 「いいかげんにしろ!冗談にも程があるよ! 私の初めてを奪った責任・・・・・ とってくれないの?///」 「//////澪////」 「勿論一生澪の事大切にする。 私も女だ!こうなった以上責任はとる!澪だけを愛し続けるよ」キリッ 「///嬉しい。絶対だから、な。」 「実を言うとさ。ここ何日かモテ期で10人位告白されて断ってたんだ」 「なにそのフェロモン!じゃ、じゃあ今日はなんで断らなかったの!? やっぱりあの子が好きだったんじゃなの?」 「あいつ、Aには悪い事したな。明日にでもきちんと話して断るよ。 なんかあいつには断りづらかったんだ。だって、、ちょっと澪に似てたから。」 「・・・それ、ぜんぜん嬉しくない・・・」 「そうだ、あと唯と紬と梓にもきちんと断るよ」 「は?」 「あいつらは軽音部の仲間だからはっきり断れなくてさ。それで部内がきくしゃくしたら嫌だろ。 梓はちょっと澪に似てて可愛いからもったいないけどな・・」 「ちょっと待って。」 「その問題発言はとりあえず置いておくとしても、怖いけど聞いておく。・・・いったい何人いるの? 今から断る人。」 「う^ーん保留してる人を含めると、覚えてない・・。 でもちゃんとするぞ。安心しろ!澪!」 「うん・・・(ほんとに大丈夫かな) あ、それと、さっきキスとか、エッチとか// 私とが初めてって言ってたけど、信じても、いいんだよね?」 「あ、ああ。もちろん!」 正直そう言ってくれてほっとした。でも・・ なんでこういう事は気づいちゃうんだろ。 「私からの忠告。ばらしても誰も幸せにならない嘘は つき通すこと。それから・・・」 スゥッ「浮気はもう絶対許さないぞ!!!!!」 「!は、はいぃ!!!!!」 この浮気者の事を考えると先が思いやられる。 明日から恥ずかしいけど二人で手をつないで 登校しようかな・・だって律は私だけのものだもん・・。 それから律が家に帰った後、 私は律のファンクラブナンバーの数の事を思い出していた。 まさかあの数字が人数ってことは、ない、よな。 翌日 ノーカウントにしたい7年間を無視して 私は晴れて律の恋人としての朝をむかえた。 無言で手を差し出すと律は照れながらそれに応えて手をつないでくれた。 なんだか周りの視線が痛いのは単に目立ってる だけじゃなくて、殺気すらも感じる視線のせいだろうか。 「澪。ちょっと学校着いたらやりたい事があるんだけど、少しだけ我慢してくれるか?」 「痛い事だったら、やだよ?」 「大丈夫私が守るから」 「?」 なんだかイヤーな予感に包まれながらもようやく学校についた。 そして校庭も半ば過ぎた頃律はおもむろに立ち止まった。 スゥッ「みんなーーー!!聞いてくれーーー!」 (!な、なんだよ律!突然叫んで!!)アセ 「私こと田井中律はー!秋山澪をー!」 「愛しています!!!!」 「昨日エッチもしました!!!」 シーン キャー!!!! 一旦静まり返った学校に突然悲鳴とも驚きとも区別がつかない叫び声が響きわたった。 「ばばばバカ!こんなところで何を言ってるんだ!! は、恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい・・・////」 後でみんなに何を言われるかわからないじゃないか! なんて私は焦っていたけれど、でもきっと律が私を守ってくれる。それも絶対。 なんて確信もしていた。 バカで浮気者の律だけど、ちょっと位なら 信用してやってもいい、かな。 おわり 名前 コメント
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投稿日:2010/11/22(月) 03 45 51 私はヒモりっちゃん 幼馴染で親友でバンドメンバーの秋山澪と同棲中だ。 私はヒモだから当然働いていない。その分澪が働いてくれてる。 今日も澪にお弁当をつくる。 え?お弁当つくってあげるなんてヒモらしくないって? ふっふっふ。甘いな。こうやってサービスして捨てられないように するのだ。ようはアメとムチだ。ふふっさすが私。ヒモの鑑。 あ、この肉団子ひとつだけ辛くしてみよう。ふふっ驚く澪の顔が目 に浮かぶなあ。 ドンナニサムクテモ~♪ 家事を一通り済ませてそろそろ夕飯の買い物に行こうとしたら澪から のメール。何々?今日は遅くなるから夕飯いらない… そっか、澪忙しいのか。まっ家事がひとつ減ってヒモの私としては ラッキーラッキー…。冷蔵庫空だけど買い物明日でいいかな… そうだ、何時に帰ってくるかメールで聞いてお風呂だけ沸かしてあげよう。 こうやってちゃんとサービスもして捨てられないようにする。さすが私… ヒモの鑑… 夕飯の買い物を済ませてアパートに向かう。メールで帰りは遅くなるって ウソついちゃったけど今日は仕事を早く終わらせた。18時にはマンション につくだろう。今日は日もいいし律に話したいことがある。 「ただいま~」 「えっ?澪?」 ふふふっ驚いてる驚いてる。 「澪、今日遅くなるって…」 「ああ、あれウソ」 「え?ウソって…あっ、ごめん私夕飯の買い物してない…」 「ああ私がしてきたから大丈夫。今日は一緒に夕飯つくろ」 「え…でも…」 なんて顔してるんだ。律はヒモだなんだといいながら私に家事をやらせる ことにはけっこう抵抗を感じることが多い。お皿洗いとか洗濯物たたむとか 簡単なことを一緒にやる分にはそうでもないんだけど。 久しぶりに律と二人でキッチンにたって料理をつくる。 ハズが… 「あっ澪ダメだってそんなに火強くしちゃ!」 「え?」 「澪、そっちの煮物はまだ火が完全に通ってないぞ!」 「あ?え?ごめん…」 「あーもー。後は私がやるから澪はおとなしく部屋で待ってろ」 キッチンを追い出されてしまった…かっこ悪い。 「ごちそうさま。今日もおいしかった」 「おそまつさま。まあ私はヒモりっちゃんだし、これくらいはな」 ちょうどいい話を始めよう。 「律、今日なんの日か知ってるか?」 「え?なんだっけ?なんかの記念日とかじゃないよな」 「今日は11/22でいい夫婦の日らしいぞ。私達にピッタリだな」 「え?いや、私ってばヒモだし…」 「律はヒモなんかじゃないだろ」 「だって私…お金稼いでないし…澪にばっか働かせてるし…」 冗談めかした照れ隠しなだけじゃなくて、やっぱりそんな事考えてたか。 「なあ律、私が仕事で律が家事。役割分担しただけじゃないか」 「でも」 「お互いの休みがあわなかったりして一緒にいられる時間が少なくなる のが嫌でこうしたんだろ?」 「うん」 「律は毎日お弁当つくってくれて、家事全部やってくれて感謝してる」 「みお…」 「ヒモなんかより夫婦って関係の方がいいな。律は私と夫婦は嫌なのか?」 「そんなこと…あるわけないだろ」 「うん!じゃあ、おいで?」 私が手を広げると律が飛び込んできた。 「へへっ夫婦の日、悪くないな」 うん、そうだな。バイバイ、ヒモりっちゃん。私は律を抱き締めた。 その後、律と一緒にお風呂に入ってさんざんはしゃいだ。 あ、変な意味じゃないぞ。 ベッドに座っているとあろうことか律がバスタオル一枚であらわれた。 「ヒモは卒業して夫婦になったからな。澪、夫婦の営みしようぜ」 そんなことを言って律は私にせまってくる。 「今夜は寝かせないぜ子猫ちゃ」 パサリ 「あ」 その時、律のバスタオルが落ちた。そして私の理性も堕ちた。 「りりりりっ…律が悪いんだからなっ!!」 「わっちょ待て澪!今夜は私がっ」 見えるけど聞こえない見えるけど聞こえない見えるけど聞こえない 「ふあっみおっ」 「朝まで寝かせないぞ私のお嫁さん!」 律を押し倒しくちづける 「んむっ、ふあっ…うん、澪…私の旦那様…」 これは本当に律が悪い。もうどうなっても知らない。 11/24昼休み。私はいつものように律弁当を食べる。今日も当然おいしい。 律にお礼のメールをしとこう。結局、朝までどころかいい夫妻の日午後まで アンコールが続きまくってしまった。さすがに律、今朝疲れた顔してたな… でも律だって私のことさんざん責め…って何考えてんだ私!でも幸せ… リツミオデドウダ♪ あ、律からメールの返信だ。何々… 「そりゃあ澪への愛情を込めたからな。午後も仕事頑張れよ!それと、でき れば早く帰ってきてね。 あなたのおしどりっちゃんより」 なんだよおしどりっちゃんっていわんとすることはわかるけど。 でも…えへへ、これで私は午後もすっごく頑張れんぐっ!! なっなんでたまごやきが一個だけこんなに辛いんだ!! またやられた…てか、外見上全くわからないってこれ凄すぎるだろ… ふふっ…でも楽しい。くくくっと笑う律の顔を思い浮かべながら私は午後の 仕事への戻るのだった。 おしまい ひもりっちゃん可愛い過ぎや -- 名無しさん (2012-11-24 00 53 43) 名前 コメント
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ふっふっふ。今日は待ちに待ったねんぷちの発売日。 今回は今までの失敗を踏まえてちゃんとBOX予約をしといた。 何度も同じ過ちを繰り返すようなりっちゃんではないのだよ。ふふふ。 そして今、予約してたお店からついにねんぷちBOXを引き取ってきたぞ!! そんでこれから澪の家に乗り込むところだ。今までの経験からいってどうせ 澪も箱買いしてるのは間違いない。だったら一緒に開けようってワケだ。 まあ、箱買いしてる以上は私も澪も無事お互いのねんぷちが揃うという結果 が待ってるだけなんだけど。 シークレットはなんだろうな。澪だといいな。あ、でもシークレットが私でそれを 澪に持っててもらうってのもいいな。でも、私はないか。そんなに人気ないしな。 バタン!! 澪の部屋のドアを力いっぱい開ける。 「澪ー!ねんぷち買って来たぜ!一緒に開けようぜ!」 「律も今回は無事に買えたのか。よかったな。」 「今回は私も箱買いしたからな!絶対澪ねんぷち入ってるぜ~」 「え?律、箱買いなんかしたのか?」 え?何その反応?澪はもしかしてねんぷち買ってないの?興味なかった? 私が頭の上にハテナマークを浮かべていると 「ねんぷちはネットで中身指定して買えるサイトがあっただろ…」 「え?何それ?」 「当然私は律ねんぷちだけ指定して買ったぞ。送料かかるが箱買いよりは安いしな」 なんだよ…それ…。あっ!でも! 「澪~、それじゃシークレットは手に入らないだろ。…まあ私じゃないだろうけど」 「ああ、シークレットならネットで事前に律じゃないってわかってたからパスだ」 え…?うううう…うれしいこといってくれてるけど今はうれしくない… なんで、なんでいつも私は… 「ばかみお」 思わず口をついて出てしまった。澪は悪くないのに。 「あーもー、なんで拗ねるんだよ」 澪が私をギュッと抱き締めてくれた。 「ほら、一緒に開けるんだろ?」 「うん」 澪がやさしい。それだけですぐに機嫌がなおってしまいそうになる私は単純だ。 「シークレットが何か律は知らないんだろ?きっといいことあるぞ?」 そして、私たちは私のねんぷちBOXをひとつひとつ開けていった。 「あ、水着澪だ。やっぱ澪はかわいーなー。この表情がまたなんとも」 「うるさい。制服律のこのドラムは凄いな~」 「ドラムだけ?」 「このドラムセットがついて500円とか安いよな~」 「む~」 そして、最後の一箱からシークレットが出てきた。私はとっても幸せな気持ちに なった。 「これで全部だな。」 「ああ。一緒に開けれて楽しかったよ。ありがとな澪」 「うん、それじゃあ」 そうして澪がなぜか私のねんぷち達に手を伸ばす。 「これとこれとこれとこれとこれとこれとこれと」 「澪?」 「これとこれは没収な」 え?は?なんで?当然私は疑問を口にする。 「あのえと、なんで?」 「は?」 澪の目が細まる。え?何これこわい。 「律」 「はい」 「いらないだろ?」 「え?何が?」 「だから、唯とムギと梓と律のねんぷち」 「え?え?」 澪が迫ってくる。何この迫力… 「律、私以外の人のねんぷちなんか、い・ら・な・い・よ・な」 「はっはい!」 思わずうなづいてしまった。ダメだね私。でも確かに…私は…澪のさえあれば… 「うん!律大好き!」 澪が思いっきり私を抱き締めてくれた。ああもうこれだけで私は全てを許せる。 やっぱ私って単純だな。 「でも…みんなのねんぷちは…部屋に飾っときたかったかも…」 「なんかいったか?」 「いえ!なんでも!」 しまった、声に出てたか。やばいやばい。 「ぷちぷち♪」 え、なんで私ブラウスのボタン外されてるの? 「ぷち♪ねんぷちもかわいいけどやっぱり本物が一番だな」 あれ?ブラのホック外されてる!? 「とりあえず他のメンバーのねんぷちがほしいなんて二度と思わないようにしなきゃな」 聞こえてたーーーーーーーーーー!! 「あっあの!みお!」 「律が悪いんだからな」 結局、私の部屋には私と澪のねんぷちだけが飾られてる。澪はあの後、私のねんぷちだけは 没収せずに返してくれた。なんでもねんぷちでも私と澪が離れ離れになってしまうのはイヤ なんだそうだ。かわいいやつめ。そして澪の部屋には全員のねんぷちが飾られている。 考えてみたらこれでよかったのかもしれない。 私は澪の部屋に入り浸ってるからみんなのねんぷちはいつでも見られる。ほとんど自分の 部屋にあるのとかわらないくらいだ。そして、私の部屋で一人になった時、澪のねんぷち 達が私を癒してくれる。うん、何も問題ないや。 でも、どうせなら澪と同棲しちゃった方が手っ取り早かったりして…そうすればねんぷちの 私と澪だって絶対に離れ離れにならないし… なんてな。 おしまい。 名前 コメント
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今日は律が私の家に泊まりに来る日だ。 金曜日。土日は学校休みだし、「しゅくだい多いし、澪しゃまに手伝ってほしいなー、なんて…」とか言われたら 「はいはい。ちゃんとノートと教科書ぐらいは持って来いよ」と言わざるを得ないだろ………どうせ夜遅くまで居座って「もうこんな時間だしぃ~」とか言って泊まってくんだし。 律は私の承諾を得るや否や、いつもの待ち合わせ場所で「ちょっと待ってて!!」と言い残すと大急ぎで帰宅しバッグをパンパンに膨らまして制服のまんまやってきた。 肩で息をしながら「ごめんごめ~ん」って言いながら駆けてくる律、可愛い。でも「まったく…先、行くぞ」とか、ちゃんと待ってた癖にツンツンする自分がもどかしい。 「待ってよみお~」なんて言いながら私のブレザーの裾を掴む律を、私は我が家へ誘った。 「おっじゃまっしまーす!!」 私より先に玄関に飛び込んだ律の声が私の家に響く。 「あら、りっちゃ~ん。いらっしゃい」 ママがさも当たり前の様に律を出迎える。 「ただいま。先に宿題済ますから…ジュースとかは部屋の前に置いといてくれればいいから」 「はいはい」 「あと、今日さ。律泊まってってもいいかな?律の方はOKもらってきてるんだけど…」 「あら、そうなの?」 「御迷惑はお掛け致しませんっ!」 「当たり前だろ…ママ、ダメかな?」 「ええ、大丈夫よ。先週は澪がりっちゃんの家にお世話になったし、ママからもりっちゃん家に連絡しておくわ」 「ホントに!?」 「お世話になりますっ!!」 律は一礼すると私の部屋に一目散に駆けて行った。 「人の家で走るなよ!」 私は律の後ろ姿に注意を喚起して 「ありがとう、ママ」 ママ……もとい。お母さんに一声掛けてから階段を上る律を追った。 「えーと、数学と科学とー」 律は部屋に入るなりバッグから教科書やらノートやらを手際良くテーブルに並べた。 乱雑に見えてもちゃんと私の分のスペースも空けてある。大雑把に見えても気配りは人一倍効くものだから敵わない。 だが、私は足りない宿題に気付く。 「お、よしよし…って、古文の宿題もあっただろ?」 私がテーブルに広がったり重なったりした教科書やらノートやらを見て突っ込むと 「ふっふっふー。古文の宿題は簡単だから授業中に済ませてあるんだゼっ!!」 俗に言う「やれば出来る子」な律はソレをちゃんと済ませていた。 私は半信半疑で見直してやったが、やっぱりちゃんと済ませていた。 「金曜日だしー、お泊まりだったらな~♪なんて考えてたらあっという間だったぜい!!」 まぁ嬉しい台詞と誇らしげに立てた親指。はいはい、とあしらいながらも笑みが溢れる。本当に可愛い幼馴染み……そして恋人、だ。 私達はブレザーを脱ぎハンガーに掛ける。いつかの休日に律とデートに出掛けた時に百円ショップで仕入れた青と黄色のハンガー。 ちょっとした回想が脳裏を過った。 「私は青使うから、澪は黄色使えよー」 「えー?私、青がいい」 「いいじゃんいいじゃん!お互いの好きな色使おうよっ!どうせ三本ずつあるし!」 「…それもそうだな」 そういう訳で三本セットのハンガーを都合2セット購入したのだった。 三本ずつという事で、一本だけ交換して、互いの部屋にある。 「じゃあ、数学から始めるぞー」 私が何か指摘する度に飽き始めてる表情だったり、むっつかしい表情をしたり 「解けた!!」とコドモみたいな可愛らしい表情をしたりしながら、律の宿題は進んだ。 「おーわった!!」 宿題を済ませると解放感に溢れた表情を、律は浮かべていた。 ソコで私はバッグの傍らに置いた携帯のランプの点滅に気付く。 宿題の邪魔になると思って着信音もバイブもオフにしといたんだった。 私の恋人もその点滅に気付いていた。 「ムギじゃないかー?」 恋人が指摘すると大当たり。 「超能力者か…」 小声で呟きメールの受信箱を確認すると 『歌詞、「失恋」とか、どう?』 こんな内容。 と、言うのも今日の部活動の終わり際。各々の楽器を片付けてる最中に 「あ、澪ちゃん。今、新曲何曲か書いてるんだけど…」 ムギが切り出した。「新曲!?」と部室がにわかに沸いた。 「しっとりとしたバラードとか、どうかしら?」 「おお!新しいね!チャレンジだね!!」 何気に眉毛を逆さのハの字にして迫り来るムギと釣られてテンションが上がる唯。 「確かにホッチキスみたいなスロー気味なのはありますけど、直球なバラードってありませんよね。いいんじゃないですか?」 梓が賛同すると律は 「しっと~りとしたバラードとか、叩けん!!」 腕組みしつつ、明らかに拒否していた。 「まあまあ…とりあえず、来週にはちゃんと出来上がると思うから。歌詞、お願い!!」 「チャレンジだよ!りっちゃん!!みおちゃん!!!」 律をなだめつつ、更に私に迫り来るムギ。と、唯。 「あぁ…分かったから、二人とも離れてくれ」 気圧されつつ私は承諾した。 「まぁ……まだ曲も聴いてないしな。よし、やってみるか!」 律もなんとかやる気にはなったようだ。 「唯ちゃんと梓ちゃんはリフだけでも考えておいてくれればいいかしらね。キーとイントロのコードは…」 「リフ……リフだね!!がんばるよ!!」 「今、リフって何の事か一瞬忘れてましたよね…」 「じゃあ、澪ちゃんもりっちゃんも。お願いね♪来週には譜面も持って来るから♪」 こんなやりとりがあって、ムギから歌詞のテーマについての提案がメールで届いた訳だ。 「失恋、か…」 「おお…」 私と律は携帯の画面を見て思わず声を上げた。そして律は 「バラードで、更に失恋……正に新境地!!」 立ち上がり拳を握り締めた。ざっぱーん、と波が打ち上がる東映のオープニングのような背景が良く似合う気合いの入った表情。 「でさ、律」 「ん?」 「実際バラードとか、どうなの?叩ける?」 「ん~。一応勉強しようとは思っててさ」 律はガサゴソとバッグからCDやらDVDやら、ドラムマガジンやらを取り出した。話の流れからバラードやスローテンポに関する音源や記事等のソレだろう。 「性に合わないな~とか思ってたけど、良い機会かなぁと」 それぞれの真新しさから、買い揃えてはあるけど未だに手は伸びていない。そんな様子が手に取れた。 「とりあえず、私は歌詞書いてみるね」 「よし!その間、バラードのドラムってヤツを研究してみるぜ!」 「頼むよ、律。バラードでドラム走るとか、致命的だと思うからさ…」 「は、はいっ…」 するとまた私の携帯のランプが点滅。 『晩御飯。部屋の前に置いといたよ』 ママから……いや、お母さんからのメールだった。何かと気を遣ってくれる。 そういえば晩御飯すら済ませてなかった事に気付いた。 『ありがとう、ママ』 私はメールの返信を早々に済ませ 「律、晩御飯だって」 「あ、忘れてた」 「部屋の前に置いといたみたいだから、取って来るね」 晩御飯を取りに行こうと立ち上がった。すると 「今私が食べたいのは…」 悪戯っぽい気配が背後に現れた。 「みおちゃんだぁ!!」 がばぁっ!!と背後から抱き着こうとする律を私は振り向き様に真正面からがばぁっ!!と受け止める。 ばふっ 「…ぁって、あれ?」 おそらく背後から抱き着こうとした律は面食らっただろう。 目の前には私のワイシャツ越しの胸。 「よしよし」 私は胸に埋まった明るい茶髪の律の頭を撫でる。 「ゴハン食べて、歌詞書いてから、な?」 「……はーい」 律は上目使いでちぇっ、お見通しかよ。と言った表情で返事をした。 残念がる律の顔があまりにも可愛いもんだから、デコにキスしてやった。 「ひゃっ!?」って驚いた顔に人差し指でちょんってやって「おあずけ」って言ってあげた。拗ねる律、可愛い。 私は拗ねる律を引き剥がしテーブルの傍に座らせ、晩御飯を取りにドアに向かった。 「あ、律。今日はチャーハンだ」 「チャーハンかぁ…」 「…くだらない駄洒落考えなくてもいいからな」 「うん…難しいからやめとく」 律の考えている事はお見通し、というか自然に分かってしまう。声とか、仕草とか、表情とかで。 お盆をテーブルに置いて、律と私。それぞれの前にチャーハンとスープを並べた。 「よし、いただきます!!」 手を合わせる律に合わせて私も手を合わせる。何度も繰り返している光景。 この私の部屋でも、食卓でも、律の部屋でも、律の食卓でも。 何度繰り返しても心中には「なんか…夫婦っぽいよな…」と照れている私が居た。 無論、口になど出せやしないが。 晩御飯を済ませるなり律は「デザートいただきまーす!」と私に抱き抱き着こうとして私にあしらわれ「はいはい」と拗ねて正座する。 私は空になった食器を台所へ運び、入れ替わりにオレンジジュースとアップルジュースを持って部屋に入る。 「ジュース持ってきたよ。オレンジとアップル。どっちがいい?」 「澪」 「じゃあ私、オレンジジュースにするね」 「…じゃあアップルのほう」 拗ねっぱなしの律。可愛い。 さて、「失恋」をテーマに歌詞を書いてみようという事で。私は机に向かっている。 律にはヘッドフォンを与え、バラードのドラミング研究に没頭してもらっている。 DVDを見ながら左右の手をパタパタさせつつ、胡座を掻いている左右の足をリズミカルに動かしているその表情は真剣そのもの。 私が惚れただけあり、良い顔をしている。どんなに見つめていても、飽きない。 時折見せる「あっ」と言う表情。何か間違えんだろう。 ソレを何回か繰り返して、没入して、身体全体でリズムを取りながらどんどん凛々しくなる表情。 つい見惚れてしまいそうになり「はっ」と気を取り直して私は机に向き直る。私は歌詞を書かなければいけないんだった。 歌詞を書くのも楽では無いが、これだけ明確なテーマがあれば書きやすい……かと言えばそうでもない。 何せテーマが「失恋」。 更に曲調はしっとりとしたバラード。「恋愛」でなら幾らでも書けるだろうが「失恋」ではまるで意味が違う。 私が書く歌詞や詩には大概、律が介在していた。 感情とか、風景とか、律が居ると何かと想像しやすい。 明らかに特別な感情(まあ……要は愛情…)を抱いているから「表現したい!」という欲求に直結しやすいのかなーなんて思ったり。 ソコで「失恋」である。 バラードで失恋ソング、なんて掃いて捨てる程ある訳で。 「書こうと思えば書ける!!」と部室では思ったが、思考に律がちょこちょこ出てくる。しかも御本人がすぐソコに居る。 なーんか頭をモヤモヤしながらペンを走らせたり、止めたり、走らせたり、止めたりを繰り返す。 思いが巡りに巡りながら「上手く行かないな…」と心の声で呟いた所で 「んん~っ」 律がヘッドフォンを外して伸びをした。目が合った。 「澪ー。調子はどーだ?」 「んー、ぼちぼち、かな」 私も椅子から立ち上がり、伸びをした。そしてさりげな~く律の後ろに回り込む。 「そっかぁ。まぁ失恋ソングとか初挑戦だしなー」 律はDVDデッキに手を伸ばそうとした。 ぎゅっ 「ぅわっ!?」 私はしゃがみ込み、律の背後から抱き付いた。 「な、なに!?」 完全に不意を突かれた律。驚いてちょっと高い声。 「……」 肩越しに腕を回して沈黙する私。 「…どうしたー?澪」 律は少し私にもたれて質問してきた。優しい声。 サラサラの髪が鼻の頭にちょっとこそばゆい。いい匂い。 「失恋って考えててさ…」 「うん…」 「色々思い出してたら、律とくっつきたくなった」 「うん」 優しい声。 「………」 「………」 続く沈黙。 「………色々、思い出した?」 優しい声が沈黙を落ち着かせた。私が回した腕を撫でる手が暖かい。 「うん…」 「聞かせてよ」 「……うん」 「…何?」 「…たくさん、失恋してきたなぁって思って」 「あぁ…」 やっぱり優しい声。 以前の律なら「え!?」とか言いそうだったけど。 「失恋した相手ってさ。全部律なんだ」 「うん」 「なんかさ。律が誰かと仲良くしてたりさ。バレンタインでチョコ貰って喜び勇んで部室に入って来たりさ。その度に焼きもち妬いて、勝手に色々思い込んで、勝手に落ち込んで…」 「うんうん」 「中学の時もさ。男子と仲良く話してたりCD借りたり、たまたま二人で居る所見掛けたり」 「うんうん」 「そのたんびに「あぁー律、私の事好きじゃないのかなぁ」って落ち込んで、一人でこの部屋で泣いて」 「うん」 「律に彼氏が出来たーとか噂流れた時もさ。何か必死になって。気が気じゃなくなって」 「うん…」 「…でも、その度に律ってちゃんとフォローしてくれたもんね」 「…そだね」 「律のイタズラで「演技でしたー」なんて言われた時は殴ってやろうかと思った時も、あったけどな」 「いつも殴ってますけど…」 「どっちにしろ、自業自得だろ?」 「はい…」 優しい声がちょっとしゅんとした。 ぎゅっ 「でもまあ」 「ん?」 「今こうやって一緒に居られるから幸せ、かな」 「んー」 抱き締めると律は身体を捩らせくすぐったそうにした。 「ねぇ、律」 「んー、何?」 「律は失恋した事、無いの?」 「んー…」 愚問と言えば愚問。これだけ長い間一緒に居れば私と同じような理由で、失恋した相手は私なんだって分かってる。 「聞きたいな、律の失恋話」 「ん~」 後ろから抱き締めていても律の難しそうな表情は分かる。 「私だって、こんなに話したんだよ?」 「むー…」 「律が話してくれたらぁ~良い歌詞書けそうなんだけどなぁ~」 私はわざとらしく抱き締めた律をユサユサと揺らした。 「しょうがないな…」 仕方無さそうに律は話し始めた。 律が話してくれた失恋話は予想通り……と言うか、私の失恋話そのまま。「私」を「律」に置き換えただけだった。 大きな違いはその悶々とした感情が表に出たり出なかったり、感情表現の仕方がちょっと違ったりした位。性格の違いと言うかなんというか。 律はたくさん、たくさん話してくれた。 大変だったんだぞー?なんて言われたり、ホントお互い様だよなぁって笑ったり。あの時は、ホンッットごめん!!ってあらためて勘違いを謝ったり。 たくさん話した。 つまるところ、私も律も「何で私はアイツの事こんなに思ってるのにアイツは気付かないんだー!!」ってモヤモヤしながらも気持を伝えられずに居たって所か。 実際は私と律が思い合ってたってだけ。 そんなモヤモヤを経て、互いに思いを伝えて今の恋人同士になったんだけど、ソレはソレとして。 「失恋っつーかさー」 ふぅ、と溜め息を付くように話す律。 「ん?」 「澪がどんどん離れてくんじゃないかー、なんて思った事もあったんだぜ?」 「へぇ」 「中学の時とかさ。特に」 「なんで?」 「澪に身長抜かれてさ。身体も女性って感じに成長してさ」 「あぁー…」 なんか、そんな事言われてもこそばゆいというかくすぐたいというか何と言うか。 「ふふっ…男子にも女子にも騒がれてさ。私とは変わらずに仲良くはしてたけど、やっぱり寂しくはなってたかなぁ…」 「そうなんだ…」 「…つーかさ。なんでそんなに身長伸びたんだよ?」 「わ、私に聞くなよ!」 「だって身長伸びたのは澪じゃん」 「聞かれても困るし」 「確かにその身長ならベースも映えるよなーとか思ってるけどさ」 「あ、あぁ、ありがとう」 「昔はそんなに身長差無かったのになぁ…」 律はちょっと拗ねた表情を浮かべてるな、と私は察知した。 「んー…、ソレはね」 私は一旦腕をほどいて律を回れ右させた。きょとん、と顔に書いてある。可愛い。 ぎゅっ 「律を、優しく包んであげなさいって。神様が私を大きくしたんじゃないかなー?」 私は腕を一杯に伸ばして律を包みこむようにして抱き込む。 「うわっ…」 律の驚きの声が私の胸の中に埋もれた。 すーはー、すーはー 私から見えるのは律の明るい茶髪と黄色いカチューシャ。 少し苦しいのか息遣いが聞こえる……と、間もなく律の顔がにょきっと現れた。 頭ごと抱えたせいかちょっと髪が乱れた。 「みお、いい匂い」 上目使いでからかってきた。 「…当たり前だろ?」 私は律の乱れた髪を右手で撫でつつカチューシャを外した。 「わっ、なにっ」 左手で律の頭ごと抱え込む。 慌てる律を見下ろしてから右手をテーブルに伸ばしてカチューシャを置く。 「律とくっついてたいんだから…律が嫌な匂いなんか、しないよ」 カチューシャを外された茶髪は少し素直になった。 サラサラの髪を右手でよしよし、とまた撫でてみる。 「…~っ」 私の胸の中で悔しがる律の顔が目に浮かぶ。 かばっ 私の右手を押し退けて前髪が下りた律が現れる。やっぱり可愛い。 でも表情はちょっと怒ってる。 ぎゅっ 逆に抱き付かれた。両腕を私の背中へ回してキツく、キツく抱き締めてきた。 私もおかえし、とばかりに抱き締めてみた。 「……澪が悪いんだからな」 律は耳元で呟くと左手をほどき、私の両膝の裏に回してきた。 「わぁっ!?」 そのまま立ち上がる律。私の身体が宙に浮いた。 「な、何するんだよ!?」 思わず律にしがみつく私を見つめながら、律は無造作な前髪も凛々しく、事も無げに言った。 「ん?お姫様だっこ」 「お姫様って…逆だろ!?」 2年の時の学園祭でのロミジュリの件もあり、思わず突っ込んだ。 「それに…私、重いし…」 私は、ダイエット中だった。部室でお茶しながら食べるお菓子やケーキが美味しくて美味しくて……って、そういう事じゃなくて。 律は軽々と私を持ち上げていた。そして 「澪が私を包んでくれるお姫様なら、私は澪を守ってあげる王子様、かな?」 王子様が悪戯っぽい笑顔で語り掛けて来た。 仕返しが成功して「してやったり」な笑顔。 「それに私、ドラマーだし。お姫様なんか軽い軽い!」 あぁ、そーいやそーか……でもそんな軽いとか言える体重じゃないし……とか考えてたら急に律、つまり王子様が愛しくなった。 ぎゅうっ お姫様だっこのまま、王子様の首に回した腕で抱き締める。 ぎゅううっっ 「………お姫様っ、ソレはちょっと苦しいッ…」 「ご、ごめんっ!」 見事に首が極っていた。思わず腕を放す私。 ばっ 「あっ」 「あっ」 腕を放せば私の上半身が少し自由になる、すなわち少し宙に浮く、落ちそうになる。 がしっ 王子様が右腕で私の背中をキャッチした。 「あっぶね~…」 「…ごめんね」 ちゅっ ホッとする王子様に軽く抱き付き、頬にキスをした。 「ありがとうの、キス」 「…っ!!」 見つめながら声を掛けるとみるみる間に王子様の顔が紅潮していく。 何か照れてるのか悔しそうなのか……色んな感情が混ざってる様子だけど、前髪と相まってなんだかんだでカッコ可愛い。すると くるっ どさっ がっ 王子様はベッドに私を横たわらせ、私の両手を両手で塞いだ。 押し倒された、みたいな体勢。 垂れた王子様の前髪が私の顔に触れそうで、触れない。そんな体勢。 …そうだ。 「……」 「…何の真似?」 王子様のさっきのままの表情が瞼の向こう側に見える。 「…お姫様」 「…お姫様?」 「王子様のキスで目覚める、お姫様」 目を瞑ったままで何を喋ってるんだって自分でも思うけども。 王子様をからかうのは、面白い。 ………………。 静寂の中、部屋にはDVDデッキが作動したままで微妙な機械音が響く。 私には王子様の心臓の音が聞こえた気がした。 そして瞼の向こうの王子様は意を決したような表情をした。 スッ 王子様の前髪が私の前髪と頬に下りて。 王子様の制服のリボンが私の制服のリボンに。 重なった瞬間。 ピタッ 私は隙を突いて左手をほどき、人差し指の腹を王子様の唇に当てた。 「…っ」 「……」 呆気に取られた王子様の表情が瞼の向こう側に見える。 目は閉じてるけど、私の左手の人差し指はドンピシャで私の唇と王子様の唇を遮ったらしい。 「……そういえば、まだ歌詞書いてないしなぁ…」 目を瞑ったまま左を向いておあずけ、と意思を示してみる。 「……目、閉じたままじゃ歌詞も書けないでしょ?」 王子様は空いた右手を私の顎に添えて、お嬢様の顔を正面に向けて やさしくくちづけた。 無論、私に抵抗の余地は無い。 「……」 王子様の唇は、温かい。 そして、舌でぺろっとすると、甘い。 「……」 「……」 唇は離れたけど私は、目を開かない。 そのまま、王子様に話し掛ける。 「……ねぇ」 「なに?」 「王子様のキスって、白雪姫だよね」 「たしか……うん」 「私、白雪姫じゃないからなぁ」 「え?」 「別に一回のキスで目覚める訳じゃないしなぁ」 「…じゃあ……もっと、キスしてみよっかな…」 王子様はベッドに散らかった私の髪ごと私を抱き抱えると、また、くちづけてきた。 王子様ったら、大胆。 サラッ また、王子様の前髪が頬に触れる。 つーか、こんな見え透いた駆け引きとか、くだらないよなぁ、とか思うけど。 王子様にくちづけられたらどうでも良くなった。 「ん…」 何回目のくちづけで瞑った目を開いたとか憶えてないし。 ずぅっとくっついてたからワイシャツ越しの体温だけはやたら憶えてて。 肝心の歌詞は…土日に仕上げようって考えてはいたけれど。 失恋ソングじゃなくなったら……ごめんな、ムギ。 名前 コメント
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投稿日:2010/11/22(月) 19 43 14 『今日は11月22日! いい夫婦の日でーす!』 テレビをつけると、アナウンサーはそんな事を言っていた。 ……いい夫婦、か。 私は振り返って、晩御飯の後片付けをしている律を見た。 結婚もしてないし、女同士。でも律の姿は、どこからどう見てもお嫁さんであった。 愛らしい横顔を覗かせている律をまじまじと見つめる私。気付かない律。 私は少し恥ずかしくなって、テレビに向き直った。 番組に、結婚五年の若い夫婦が出ていた。 『結婚されて五年ですか』 『そうなんですよー』 『どうですか、奥さん』 『もう毎日幸せです』 画面の下部に映されているテロップには、夫婦の名前が書かれてあった。 年齢は、旦那さんが24歳、奥さんが23歳だった。 五年……ということは、二人が19、18の時に結婚したのかな。 それを考えると、私はどうしようもないような悔しさと、ちょっとの寂しさが浮かんできた。 ――律だって、19なのに。私だって、18なのに。 なのに。テレビの二人のように、結婚なんできないんだ。できやしないんだ。 私だって、結婚何年って自慢したいよ。幸せですって、言いたいよ。 それなのに、女同士だからって――私は、私たちは。 夫婦だって、名乗れないんだ。 気持ちは夫婦なのに、恋人なのに――。 五年だなんて、呆れる。 私たちは、9年だ。夫婦じゃないけど、もう好き合って9年なんだぞ。 悔しくもあってけど、私はテレビの夫婦に誇って見せた。 その時、後ろから声がした。 「澪ー」 「何?」 「ケーキ食べようぜ」 「はあ? なんでケーキなんだよ」 「今テレビでやってんじゃん。今日、いい夫婦の日だろ?」 ――……! 「……わ、私たち、夫婦じゃないのに?」 「何言ってんだよ。そりゃ、正式な夫婦じゃないけど……」 律は冷蔵庫から丸いケーキを取り出した。語呂合わせの記念日にしちゃでかすぎる。 それを運びながら、律は白い歯を見せてさらに笑った。 「でも、私にとって澪はお嫁さんだからなー」 「って、おい」 「それとも澪は、嫌なのか?」 「……馬鹿律。私の気持ち、知ってるくせに」 「だろ? 気持ちは夫婦だし、唯たちもよく言ってるじゃん。『りっちゃん達は夫婦だし』って」 唯たちは私たちを、よく『夫婦』だとからかった。『恋人』だとも、『カップル』だともからかった。 それを否定していた私たちだけど、実は嬉しかったんだ。 そうだ。 悔しくなんかない。 だって私と律は、いい夫婦なんだから。 「だからさ、記念に食おうぜ」 テーブルに置いたケーキ。私の隣に座る律。 ケーキの真ん中のチョコレートには――。 「……律、わざわざこれ書いてもらうように言ったのか?」 「悪いか? すっげーいいだろ」 「いいけど……これを書いてくださいって言うのはちょっと恥ずかしかっただろ」 「結婚されてるんですか、と言われた」 「で?」 「してますって言っておいたよ」 「捏造すんなよ」 「私と澪が夫婦なのは嘘だと思ってんの?」 「……思ってるわけないだろ」 私と律は、笑った。 表面的には夫婦じゃなくても、私と律は夫婦なんだから。 それに、結婚してるかしていないかで、私たちの気持ちは図れやしない。 幼馴染で、親友で、恋人で、カップルで、夫婦。 それでいいよ。 律と一緒なら。 「それじゃあ、これからもよろしくな澪」 「……うん、ありがとう律」 いただきます。 分け合ったチョコレートには、私と律のありったけの想いが詰まってた。 『律&澪 夫婦円満! おしどり夫婦!』――。 ~~おまけ~~ 澪「律ー、さっき私は律のお嫁さんって言ったたけど」 律「なんだよ?」 澪「そんなのずるい! 私だって律の旦那さんになりたい!」 律「はあ? どう考えても澪はお嫁さんじゃん」 澪「律だって、可愛いし! 家事だって完璧だし、お嫁さんじゃないか」 律「わ、私がお嫁さんなんて……おかしーし」 澪「おかしくねーし! いやむしろそうあるべき」 律「落ち着け。いやあ、でもやっぱりさ、私男っぽいじゃん?」 澪「どこかだよ。律は誰よりも女の子らしいの、私知ってるんだぞ」 律「で、でもさあ」 澪「でもじゃないよ。それで、旦那になって、律をいじめてやる」 律「お前ベッドの中じゃいつも私いじめてんじゃん。旦那も嫁もないぞ」 澪「そ、それは……律が可愛すぎるのが悪いんだよ。いちいち可愛い声で喘ぐから」 律「し、仕方ないだろ……。とにかく、私が旦那で澪が嫁!」 澪「私が旦那で律がお嫁さん!」 律「澪が嫁!」 澪「律が嫁!」 唯「夫婦すぎるね」 梓「オランダ行きの飛行機がアップを始めました」 紬「打倒! 女同士で結婚できないこの国!」
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クリスマスが終わった。 別に何十年と、物心ついたときからその『終わり』は経験してきた。 楽しい時間は、必ず終わる。クリスマスだって終わる。 そんなの当たり前だし、年中行事は日にちを過ぎれば終るんだ。 でも、それが物悲しくなったのはいつからなんだろう。 子供の頃は、別に純粋だった。 クリスマスが終わっても、プレゼントに喜んでいられた。 行事が『終わる』ということに、特に何も感じなかった。 だけど。 高校生になってから、『終わり』が怖くなった。 終わってしまうことが、悲しいんだ。 なんか切ねえ。 「律?」 「えっ? あ、ごめん。なんだって?」 「聞いてなかったのか? そこの袋取ってくれよ」 今日はクリスマスツリーの片付けだ。 私の家のダイニングに立てられていた、それなりのクリスマスツリー。 昨日まで煌びやかに輝いていたけれど、それも今日でお終い。 クリスマスは終わったのだから、もうツリーの仕事は終わりだ。 それを片付けるのも、私たちの仕事だった。 ツリーの高さは私と同じくらい。澪よりちょっと低い程度。 その澪は、ツリーの上の方から飾りを取り外していっていた。 私も手伝っていたけれど、途中からなんか物思いにふけってた。 袋と言われて、足元にある白い袋を手に取る。 この袋は、主に飾りを入れておく専用の袋だった。 私はそれを澪に渡すと、澪は手に持っていた飾りをそれに入れた。 その様子を、私は見ていた。 澪は私の視線に気付いたのか、首を傾げる。 「どうしたんだ? さっきからぼーっとして」 「……いや、なんでもねえ、けど」 「嘘だろ」 「嘘じゃないって」 嘘だ。 私は飾りに手をつけた。緑の枝から、綺麗な飾りを外していく。 澪とたまに目があったけど、私たちは黙々と飾りを取っていった。 雪を模した白い綿も取って、少しずつツリーは緑色になっていく。 一番上の、木のてっぺんの星だけはまだ取らずにいた。 一番下まで全部の飾りを取り終えた。 ツリーは、てっぺんの星の輝きだけが残ってる。 そこから下は、寂しそうに真緑なただの木だ。 木といっても、作り物だから本当の木じゃないけど……。 でも、飾りも何も無いツリーは、本当に寒そうだった。 「あと、この星だけだな」 「ああ。澪、取れよ」 「いや律が取れ」 「これどっちが取るとか、重要なのか?」 「いいからさ」 「わかったよ」 私は腕を上げて、星を掴んだ。 子供の頃は、これを見上げていた。 ツリーもすごく高くて――なのに、もう同じ身長だ。 私、成長したなあ。 星を取った。 同時にふと見た澪の表情は。 寂しそうな笑顔だった。 ■ ツリーは倉庫に片付けて、私たちは私の部屋に戻った。 暖房を効かせておいたはずなのに、妙に肌寒かった。 「寒いなー」 「暖房本当にかけたのか律?」 「かけたよ。どっか窓開いてたのかー?」 確認を取りに窓際に行くが、開いてなかった。 じゃあなんで、こんなに寒いんだろう。いや、でも……。 寒い廊下から突然暖かい部屋に入ったから、寒いのかな。 多分そうだ。指先はまだ微妙に感覚が無い。 ダイニング、暖房かけなかったからなあ。 寒い部屋で片付けるんじゃなかったかも。 窓の鍵がしまっていることを確認した。 その時だった。 ――澪に後ろから抱きつかれた。 首に腕を回されて、澪の顎が私の右肩に乗る。 私はあまりの驚きに、硬直した。 そして、右耳でわずかに聞こえる澪の息遣いが。 首を取り巻く澪の腕が。 背中に当たる澪の胸が。 私の心臓を叩く。 「律……」 「……どうした澪」 耳元で名前を呼ばれると、くすぐったい。 澪の声は、細くて、弱かった。 「クリスマス……楽しかったな……」 澪が微かに笑ったような気がして。 私は、自分の胸の前にある澪の腕に触れた。 暖かかった。 「ああ……」 「来年も、一緒にさ……クリスマス……」 途切れ途切れってことは、照れてるのかな。 私はなんだか、さっきまでの切なさが嘘のように微笑ましくなった。 「わかってる。来年も澪と一緒にいるよ」 「来年だけじゃ、許さないからな」 「ああ。もうずっとずっと一緒だ」 「……律」 さっきよりもギュッと抱きしめられた。 私は、それに反応するかのように、澪の手をギュッと握ってやる。 感覚の無い指先が、少しずつ感覚を取り戻していく。 耳に聞こえる澪の吐息。 なんというか。 「おい、澪」 「なに?」 「……無防備すぎだろ」 こんなにくっつかれて、平気なもんかよ。 「律、昨日あれだけやってまた?」 「し、仕方ないだろ。お前が抱きついてきたのが悪いんだ」 「……いいよ、私も。抱きついてたら、その……」 澪の吐息が、いつのまにか甘くなっていた。 私はおかしくなって、笑った。 ■ クリスマスって、終っちゃうの悲しいけど。 でも学園祭みたいに、来年がないなんてことはないんだ。 多分何十年経ったって、なくなりはしないイベントだろう。 だから、悲しくない。 澪だって言ってくれた。 『来年』って。 私も言った。 『ずっとずっと』ってさ。 終わりは始まり。 私と澪には、一緒に迎える行事がまだまだたくさんあるんだ。 一緒に楽しめる、いろんな出来事がこの先待ってる。 だから、いちいち切なくなってなんかいられねえよな! クリスマスだって来年もあるんだ! 終わりは始まり。 一日が終われば、明日が始まる。 一年が終われば、来年が始まる。 クリスマスが終われば、もうすぐお正月だ。 今度、お羽根突きで澪に勝つ! で、顔に落書きしてやるぜ。 でもカルタは澪強いんだよなあ……。 終わりは始まり。 今度迎える楽しみな出来事。 あといくつ寝ると、なんて歌があったけど。 私、全然成長してねえな。 まだ、『次』が楽しみで仕方ないじゃん! 澪と一緒だから、もうなんでも楽しみだ。 ■ 名前 コメント
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律「今何時ー?」 澪「11時30分とちょっと」 律「もうそんなんか」 澪「そんなんだな」 律「テレビいいのないなぁ」 澪「音楽やってんなら紅白見ろよ」 律「なんかあれは疲れる」 澪「まぁ…」 律「おっ、この人カッコイイなぁ」 澪「はっ?」 律「ほら、今歌ってる人」 澪「……………全然」 律「んー、そか」 (澪と一緒のつり目だからなあ) 澪「りつ…お前っ…私というものがいながら…!」 律「えっ?」 澪「こんな男に、か、カッコイイなんてっ」 律「おい、澪ー?」 澪「駄目だぞ律、私はお前の女なんだからな!」 律「不良みたいな表現だな…」 澪「今さら男を知りたいとか言っても許さないからな」 律「ん…お前こそ、一生男なんて知らせないからな」澪「律を知らなくなるより百倍いい」 律「………」 澪「どうした?顔赤いぞ」 律「ぁ…い、今何時?」 澪「11時40分」 律「ま、まだ20分あるな」 澪「んー」 律「雑誌でも読むか」 澪「あ、そこのファッション誌貸して」 律「うん」 澪「律もこんなん読むんだな」 律「乙女の嗜みよ!」 澪「はいはい…あ、この娘可愛い」 律「はっ?」 澪「ほら、このパーカーの娘」 律「……………全く」 澪「ふーん」(律の持ってるのと似てる) 律「…私よりも可愛い?」 澪「えっ?」 律「その娘と私、どっちが可愛い?」 澪「おい律?」 律「……私以外の女に可愛いなんて、言ってんじゃねーよ…」 澪「…律は、超可愛い」 律「…えへへ」 澪(キュンキュン) 律「どした澪ー?真っ赤になって」 澪「ぃ…11時50分だ!」 律「いや別に時間聞いてないし」 律「嫉妬するのも疲れるな」 澪「同性だから男にも女にも気を配らなきゃいけないしな」 律「めんどくせぇな」 澪「…でも、嘘はつけないよ」 律「んはは、そーだな」 澪「…律…」 律「んー」 澪「…うふふー」 律「なんだよー…で?…今何時よ?」 澪「あー11時55分」 律「あと5分…なぁ、もう今しないか?」 澪「ダメダメ、ちゃんとしないと」 律「やっぱりめんどくさいよ」 澪「私のワガママが聞けないのか?」 律「へーへー」 澪「ほら、そろそろそこに座って」 律「へいへい」 澪「向かい合って」 律「ほいほい」 澪「………」 律「………」 澪「………」 律「…いや急に黙んなし」 澪「ほら、あと2分」 律「あーもう」 澪「正座!」 律「えー」 澪「早く!あと1分だぞ!」 律「はいはい」 澪「………」 律「………」 (やっぱり黙るのかよ) そして0時0分… 澪「りつ、あけましておめでとう、大好きだよ」 律「あけましておめでとう、愛してるよみお」 澪「うえっ!?おまっ…おまおまお前っ!…せ、台詞変えるなよ!」 律「うはは、初!澪いじりだ」 澪「…うー…意地悪…」 あけましておめでとうございます。 END 名前 コメント
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6月30日。 今日はロミオの日!なんつって。 ロミオとジュリエットといえば…私は高3の学園祭のことをふと 思い出した。 あの時は大変だったなー。澪は主役を嫌がるし、いざ役の練習を したらお互い全然うまくできないし。 でもお互いがお互いの役を演じるのを思い浮かべて演じたらうま くいって、結局本番も大成功だったな。 あの時の澪はけっこうかっこよくて様になってたな。劇の途中で 吹き出しちゃいそうになったけど。 でも、劇が始まるまでは緊張でガチガチでとてもじゃないがつい ていきたいと思わせるようなロミオじゃなかったっけ。 けど今の澪は大分成長した。恥ずかしがりで怖がりなところとか はまだほんのちょっぴり残ってるけどそれでももう高校時代まで みたいなことはない。 今のロミオなら十分ついていきたいって思えるんじゃないかな。 澪に比べたら私の方があんまり成長してないと思う。 あ、身体的なことじゃないからな!私も今となってはせくしー ぼで…すいません嘘つきました。うん、この話はやめておこう。 もう、澪が私の手助けとかを必要とすることはほとんどない。 まあ私が手助けできることも少ないんだけどさ。あいつ基本的に なんでもできるしさ。 もう澪には私はあんまり必要じゃないのかな~なんてガラにもな くネガティブなことを考えちゃう私。アンニュイだな。 「ただいま~」 そんなことを考えてたら澪が帰ってきた。 「おかえりロミオ」 「ロミオ?なんだよいきなり」 「高3の学祭のこと思い出してた」 「ああ、あの時の劇か。でもなんでまた」 「今日は6/30でロミオの日だから!」 「またバカなことを」 「わるかったなー」 「それより…りーつ」 澪が後ろから私を抱き締めてくる。 「何悩んでるの?」 「べっ別に悩んでねーし」 「うそつけ」 「なんでだよ」 「わかるよ律のことは。付き合い長いだけじゃないだから」 うれしいこといってくれるじゃん。ホント成長したよ澪は。 「高3の時のロミオはさ、とてもついていきたいとは思えなかっ たけどさ」 「うん」 「今のロミオならついていきたいって思えるよなー」 「そうか?」 「うん。もう私の手助けなんて必要ないんだろうなーって」 「不安になったのか?」 「そういうわけじゃねーけど」 「はあ、相変わらずバカだなあ律は」 「うわ、すげーいいかた。さすがの私もへこむぞ」 澪は深いため息をついた。あれ?澪の私を抱く力が強くなる。 「私からいわせれば律は反則だよ。」 「何が?」 「私を引っ張ってくれて頼りになるかと思えば、こんな風に不 安になったりしてしおらしくなったりしてさ。かっこよかった りかわいかったりずるいよ」 「なっ!?しおらしくなんかねーし!かわいくねーし!」 「かわいーし!そうやって照れてる律もかわいいよ。私だけが 知ってる律…」 「うぅ~///」 「いつの時代もロミオはジュリエットにメロメロなのです」 「ぷっ、なんだよそれ」 「ああ、ジュリエット。どうして君はそんなに美しいんだ~い」 「ロミオってそんなキャラか?ぷぷっ」 「くくくっ…あははははは」 二人で笑いあう。やっぱり澪といると楽しいな。 「だからさ、変なことで不安になったりするなよな」 「うん、ありがと澪」 「………」 なぜか無言になる澪。 「どうした?」 「いや、律が素直にお礼をいうなんて意外だなって」 「なにお~っ!離せ澪!おしおきしてやる」 「や~だっ。ロミオの日か。なんかその気になってきた。」 「え?」 「このまま、ロミオとジュリエットでしちゃおうよ」 「みっ澪!?うむぅ!?んぐっ」 「ロミオだろ」 「はあっ…ロミオ…」 やば…私もその気になってきちゃった…いっか…このまま… 「ジュリエット…」 「ロミオ…愛してる」 「っ」 一瞬赤くなるロミオ。ああこんなところは昔のロミオのままだな。 「愛してるよジュリエット」 ロミオの日、悪くないな。そんなことを思いながらジュリエット は頼りになる一生ついていくロミオに全てを委ねた。 おまけ 2時間後 「ふぅ…さすがに疲れた。シャワー浴びて今日はもう寝ちゃおっか」 「…私達の場合はジュリエットの尻に敷かれるロミオだったよな」 「え?」 「今度は私がかわいがってやるぜ!覚悟しろロミオ」 「きゃっ!待って!やめろ~こんなジュリエットはイヤだ~」 「問答無用!それにホントはイヤじゃないんだろロミオちゃ~ん」 「もう…ジュリエットのいじわる」 私達のロミオとジュリエットはシェイクスピアのロミオとジュリエ ットとはちょっと違うんだぜ。悲劇じゃなくてハッピーエンドにな るところとかロミオがこんなにかわいすぎるところとかな~。 おしまい いいね!こういうの、いいですね!ニヤニヤです。できれば途中2時間の詳細プリーズ! -- 名無しさん (2012-07-05 22 46 08) 名前 コメント
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『2月14日』今日はバレンタインデー男女が愛を誓い合う特別な日。 私、秋山澪もその特別なイベントに乗じて思いを伝えようとしている。 正直、この日をカラメルソースのようなほろ苦い記憶にはしたくなかった。 しかし、思いを伝えずに後に残らないのはもっと嫌だ。 だから、この日の記憶が甘い甘い一生に残るものにしようと、必死に作った私の初めてのチョコレート。 出来ればこの日が私のチョコレートのような甘くてとろけるような一日になるのを信じて… 部活の終わり、いつもと同じ道をいつもと同じ人と帰る。 ただそれだけの事なのに、この後の事を考えると緊張せずにはいられない。 「しっかし、すごいなー澪は。」 「…何がだよ。」 「そのチョコレートの量だよ、流石ファンクラブのある人はちがうな~」 私の持つ紙袋に一杯に詰め込まれたチョコレートを眺めながら、からかうように言ってくる私の思い人。 しかし、その本人もボーイッシュな見た目と元々の面倒見の良さからか後輩達に人気があるらしく、 それなりの量のチョコレートを貰っている。 「律だって、結構貰ってるじゃないか。」 「いやーとてもとても、澪様には敵いませぬー」 「はいはい…」 いつも通りおどけたように話す律をしり目に、私は自分のチョコレートをどう渡そうか頭を悩ませていた。 元々恥ずかしがり屋で臆病な私が『律、これ私の気持ち受け取って…』なんてあっさり言えるわけもない、 むしろ、言えるならとっくの昔に伝えている。 「(決意したからって、そんな簡単に自分の性格は変わらないよな…)」 そんな事を考えながら、ああでもない、こうでもないと考える。 「いや~そんなに食べるとまた体重が増えちゃうな!」 「あぁー…そうだな…」 「うわっ!いてぇ!!…って、澪しゃん?」 「(どうやって自然に思いを伝えられるかな…こんな道端で言うのは恥ずかしい… やはり私の家に呼ぶのが…でも…)」 「おーい!澪!」 「うわっ!ど、どうした?律?」 「どうしたって…話し聞いてくれないとか、どうせ、あたしの話になんか興味ないんだなー」 「違うぞ律!少し考え事をしてたんだ!」 自分の考え事に夢中になりすぎて、律の話をおろそかにしすぎた私に、 ふてくされたような視線をなげかける律、しょうがないだろ。 私だって精一杯なんだよ… 「ふーん、どんな考え事してたんだ?」 「え…それは…」 言えるはずがない。『律にどうやって告白しようか悩んでるんだ』とか、絶対に無理だ。 そんな私の戸惑った雰囲気を察したのか、律は質問を変えて別の質問を投げかけてきた。 「…まぁ、いいや。それより今から澪の家に行って良い?」 「…え!?」 「無理なら良いんだけど…」 無理じゃない、むしろ好都合だ。 私が言えなかった事があっさり実現してしまった。 しかし、その嬉しさを隠すように冷静に律に話しかける。 「でも、良いのか?律だって結構荷物あるだろ?」 「まぁー澪しゃんよりは軽いしな!」 「そうか、じゃあ遊びにきてよ。」 嬉しさを隠しながら言いつつ心の中でガッツポーズを決める。 「…それに、澪の荷物増えちゃうしさ。」 「うん?律なにか言った?」 「別にー」 おかげで律がぼそっと、言ったその一言には気付けなかった。 「おじゃましまーす。」 「あぁ、今日親出かけてるから気にしなくて良いよ。」 「ほほう、それは好都合…」 「何か言った?」 「いや、別に?」 「そう…」 「隊長無事、部屋に帰還する事が出来ました!」 「何ごっこだそれは…」 「りっちゃん隊員ごっこ、隊員は喉が渇いたからジュースを所望するであります!」 「はいはい、今入れてくるから。」 ふざけてはいたが、律のお願いは正直助かった。 少し間を持たないと緊張のしすぎで心臓がもたない。 親もいない自分の家で、本当の意味で律と二人きり…否が応にも意識してしまうし。 はぁ、こんなので本当に思いを伝えられるのか不安だ… 「おまたせ、ジュース持ってきたぞ。」 「おーう、ありがと。」 「………」 「………」 それからしばらく二人とも無言でジュースを飲んでいた。 私が意識しすぎて何も言えないでいると、律の方から話をふってきた。 「なぁ、澪ー」 「なんだ?」 「澪ってさ、チョコレート一杯貰うじゃん?」 「?あぁ、貰うな。」 「どう思う?」 「え、それって…?」 「だから、中には本命をくれる子とかもいるわけだろ?それを貰ってどう思う?」 「えっと…」 律の顔がいつになく真剣な顔で私の顔を見つめる、だから私も同じく真剣な顔で律の顔を見つめ返す。 どう思う…気持ち悪いとは思わない。だって、私もくれる子と同じ立場の人間なのだから。 でも律はどうなんだろう…もし気持ち悪いと思われたら…そう思うと体がすくむ。 でも、やっぱり、伝えたい。今言わなかったら絶対に言えない。 自分の心を奮い立たせて、自分の気持ちを言葉にすることにした。 「そうだな、嬉しい…かな。」 「嬉しい…?」 「うん、こんな私を本気で好きになってくれてるんだ。って。」 「はは、そうか、じゃあ、そんな子達への返事はどうするんだ?」 「…気持ちは嬉しいけど、今日くれた子達への思いには答えられない。」 「…え?」 「だって、私にも好きな人がいるんだ…」 そう言った瞬間律が悲しそうな顔をした気がした。 「はは、澪にも好きな人がいたのか~私にも教えないなんて傷つくなぁ!」 「誰なんだよ、澪の好きな人って、こんなかわいい子に好かれる幸せ者は!」 早口で言う律、何か勘違いをしているようだ。 でも、この反応を見て私の気持ちが少し楽になった気がする。 「幸せかは分からないけど…」 「私の好きな人はな、いつも元気で、私のそばにいてくれて、ちょっかいばっかりだしてきて、 私の嫌がることばっかりするような奴で、鈍感で、その癖凄い繊細だったりする。」 いっきに思ったことを伝える私、そして最後にどうしても伝えたかった一言を添える。 「そんな幼馴染が好きなんだ。」 「えっと…」 「はい、今日ずっとこれをどう渡そうか考えてた。」 そう言って差し出したハート型のチョコレート。 私の思いを全部詰め込んだ本命チョコを渡した瞬間、律がへたり込むように話し出した。 「これは…その…本命チョコって事で良いんだよな…?」 「言わせるなよ…野暮だぞ。」 「はは…ガラにもない事してくれるじゃん…」 「こう言うのは、私から言う物だと思ってたのに…」 「…じゃあ、律も?」 そう声をかけると同時に差し出されたチョコレート。 私と同じハート型をしたチョコレートだった。 「律…」 「ほんとは私から言うはずだったんだけどな…はは。」 「澪に好きな人がいるって聞いたら言葉でなくなっちゃってさ…」 「でも、澪の気持ちが聞けて嬉しかった。」 「告白してくれてありがとな、澪。」 「お礼とか…私が伝えたかっただけだから。」 「じゃあ、澪に負けないように私も言わないとな!」 「え…?」 「澪、私はお前が好きだ!付き合って下さい!」 大きい声でなんて事を言ってるんだ、誰かに聞かれたらどうするんだ。 って、言うか改めて言われると恥ずかしすぎて何が何だか分からなくなる。 あぁ、なにか言わなくては! 「こ、こちらこしょよろしくでしゅ!!」 「ぷっ…噛みすぎだろ!」 うぅ…恥ずかしい。 そんな照れ隠しをするように律をいつも通りに怒ってみる。 でも、そんなやり取りも何だか新鮮に感じる。 「う、うるさい!バカ律!」 「はは、これからもよろしくな!」 「うん、これからもよろしく」 「じゃあ、早速!」 「な、なんだよ…」 「澪しゃんのチョコをいただきますか!」 「待て!」 「えーなんでだよー」 「私が勇気を出して告白したんだから、私が先に律のチョコを食べたい!」 「何だそれ、別に良いけど…」 私のチョコレートをお披露目するの前に律のチョコを見ておかねば。 律は料理はできるけど、お菓子はどうなんだろうか。 細かい作業苦手だし案外失敗してたり…何ていう淡い期待を打ち砕く立派なチョコレートが出てきた。 ハート型のチョコのなかにホワイトチョコで『澪大好き』と、書いてある。 「律もこういう所は女の子だな…」 「う、うっせーし!早く食べてくれ…恥ずかしい…」 「じゃあ、頂きます。」 「ど、どうかな?」 甘い、それでいてスッと溶けるようになくなっていく完璧なチョコレートだ。 「すっごく甘くておいしい…」 「へへん!お口にあって良かった!今度こそ澪のをいただくよん♪」 「どうぞ…」 「どれどれ…」 私の作ったチョコレートは律のと比べお世辞には立派とは言いがたい… 文字とか思いつかなかったし… 「まぁ、チョコレートは見た目じゃないしな!」 「味と、気持ちで勝負だしな!」 「律、無理しなくても良いよ…」 「無理なんかしてないよ!いただきまーす」 そう言って口いっぱいにチョコレートをほおばる律。 「…どうかな?」 「頑張って作ったんだけどおいしい…?」 「んー…」 「やっぱりおいしくなかったんだ…」 律の反応を見て目頭が熱くなるのを感じた、初めてとは言え上手く作れなかった自分の腕のなさが悔しい。 「あ、いや…おいしくなかったと言うか、ちょっとだけ苦かったと言うか!」 「良いよ律、無理しなくて…」 「無理なんか…あ、そうだ。」 そう言って近寄ってくる律、一体何をするのか疑問に思っている私の顔にどんどん律の顔が迫ってくる。 「ちょ…律、一体何を…!」 「良いから…それとも、まだこう言うのは嫌か…?」 「嫌…とかじゃないけど…恥ずかしい…」 もうお互いの顔が鼻先まで接近していてお互いの呼吸まで感じられる位置に来ており、 少し動くだけでも唇が触れ合いそうになっていた。 普段ボーイッシュで活発な律も、今は頬を少し赤く染め、かわいらしい少女のような雰囲気をかもしだしていた。 そんな律に目を奪われていると、じれったそうに律がささやいてきた。 「そうか…じゃあ、ちょっと目を瞑ってくれるか?」 「えっと…はい。」 そう言って目を瞑る私、しかし緊張のためか力が入り無駄に固くなっているのが自分でも分かる。 そんな私を見て律が苦笑しながら優しく話かけてくる。 「痛いとか、そういう事はないからもっと肩の力抜いて。」 「う、うん…」 「じゃあ…」 そう言うと同時に、ちゅっ…っと、唇に暖かくて柔らかい感触が伝わる。 「…ん、ちゅ…律…」 「…っふ、澪…」 そう言いながらお互いに夢中で唇の感触を確かめ合った。 触れては離し、また唇を重ねる、そんなフレンチキス。 律の唇はまるでマシュマロみたいにふわふわで、私の理性を容赦なく奪っていく。 もっと、もっと触れていたい、そう思いながら口付けあっていると不意に私の唇が割られ口内に律の舌が差し込まれてきた。 「ふっ、ぷは、り…律…」 「大丈夫だから…私に任せて…」 そう言って律はさっきまでとは違う、柔らかく、余韻がさっと消えるような優しいキスではない。 濃厚で余韻が体の芯に響くような恋人同士のキスを始めた。 律の舌が私の口内で自由に動きまわる、舌を絡ませたり、歯を舐めたり。 その舌の動きを感じる度に私の体が反応する、お互いの唾液が混じりあい、頭の中がぐちゃぐちゃになっていく。 律の舌はぬるぬるとした感触が何ともいえない心地よさで次第に何も考えられなくなっていった。 「──っふ、ぷは、はぁはぁ…」 「ふっ、ぷぁ、はぁはぁ…」 お互い息をするのも忘れてキスをしていたらしい、だから頭がボーっとしていたのか。 なんて考えていたら、律が赤く染まった顔の表情を崩しながら話しかけてくる。 「澪しゃんすっごいいやらしい顔してますね~」 「はぁはぁ…ど、どういうことだよ…」 そう聞くと律は何も言わずに口元を指差した、 慌てて口元に手をやると、そこにはあふれ出したお互いの唾液が飲みきれず一本の筋を引いていた。 「な、なな…!」 「そういうの見せられると我慢できなくなっちゃいますな~」 さっきまでの真剣な表情とは違う律、私も負けじと同じ言葉を返してやる。 「そういう律だってえっちな顔してるよ、口元からそんなに…ふふ」 「う、うああぁ…!」 そう言って慌てて口元を拭う律を見て、一気に緊張の糸が解れ笑いが止まらなくなってしまった私。 そんな私を見ながら律が恨めしそうに言う。 「そんなに笑うなよ!で、どうだった?」 「何が?」 「だから!ファーストキスの味だよ!」 「え…あっ!」 「気付くの遅すぎるだろ~」 「え~…少し苦かったかも…」 「それが澪のチョコレートの味だ!」 「じ、じゃあ律はどうだったんだよ!」 「私のファーストキスは甘くてとろけるようなチョコの味だな!」 「うぅ…」 「まぁまぁ、でも澪の唇はふわふわのマシュマロみたいでおいしかったよ?」 「な、な、恥ずかしい事を言うなー!」 「あいたー!褒めたのになんで殴られたんだ!?」 「うるさい!もう知らない!」 「ちぇー…でも」 「うん?」 「来年はお互いが甘いキスになったら良いな。」 「…頑張ります。」 私は今日という特別な日を忘れる事はないだろう。 律と恋人になれた日。初めての甘いキスをした日…ここに偽りがあるか。 少し失敗したチョコレートのおかげで、ほろ苦い味のキスになってしまったが。 今日と言う、甘くてとろけるような一日の思い出に残ったほろ苦いキス。 来年はもっともっと甘くてとろける一日にしてやろう。 「来年こそは甘いキスを…」 そう心にリベンジを誓い、律とのキスの余韻を楽しむのだった。 おわり 名前 コメント